国民年金(老齢基礎年金)の繰上げにおける注意点とは?③

 老齢基礎年金の繰上げ請求についての注意点は次のような点も挙げられます。

 

⑤年金選択関係による不利益や請求不可となる不利益

 

 老齢基礎年金の繰上げ請求とは65歳到達前に請求しますので、65歳前に遺族給付や障害給付の受給権を得た場合には、繰上げ支給の老齢基礎年金と発生した遺族給付や障害給付との何れかの選択関係に発展することがあります。

 

 60歳到達前に遺族給付や障害給付の受給権が発生している場合は、通常、そのことも考慮して老齢基礎年金を繰上げ請求するかを決定するはずですので不利益を生ずることは少ないと思料されます。

 

 しかし、典型的な例として、60歳到達以後、老齢基礎年金を繰上げ請求した後に配偶者等の死亡により遺族厚生年金が発生する場合、繰上げ支給の老齢厚生年金か遺族厚生年金の何れかを選択することになり、遺族厚生年金を選択する場合には繰上げ支給の老齢厚生年金が支給停止となるため繰上げ請求が結果的に不利益となることがあります。

 

 また、遺族給付のうち寡婦年金については、死亡者が繰上げ支給の老齢基礎年金の受給権者であった場合には請求不可となるため、繰上げ支給の老齢厚生年金を受給して数月のうちに死亡した場合には妻にとって結果的に不利益となり得ることもありますし、繰上げ請求を行った後に交通事故等で障害状態となったとしても障害基礎年金の請求が出来ないという不利益もありえます。

  

 老齢基礎年金の繰上げ請求を行う理由は個々人により異なると思いますが、経済的に困難である等の理由ではなく、噂話等によって安易に繰上げ請求を行なうことは今までに触れてきた理由により不利益となることもありえますので、個々人の置かれた状況により様々な視点からの検討を行なうことが最も重要であるといえます。

国民年金(老齢基礎年金)の繰上げにおける注意点とは?②

 老齢基礎年金の繰上げ請求についての注意点は次のような点も挙げられます。

 

③寡婦年金が失権する

 

 配偶者の死亡により寡婦年金の受給権が発生することがありますが、この寡婦年金は60歳から65歳までの有期年金であるため、老齢基礎年金の繰上げ請求をすると老齢基礎年金の受給に関しては65歳とみなされることと関連し寡婦年金が失権します。

 

 老齢基礎年金の繰上げ請求をすると寡婦年金が失権となり権利を喪失してしまうのであり、繰上げ支給の老齢基礎年金との選択関係とはならないことにならないため、受給開始年齢前に寡婦年金の受給権を取得している場合は特に注意が必要です。

 

 また、寡婦年金は平成29年8月1日より受給要件である相手方配偶者の国民年金第1号被保険者期間の必要月数が25年(300月)から10年(120月)に短縮されることもあり、より慎重な対応が必要であるといえます。

 

④障害基礎年金が原則請求出来なくなる

 

 国民年金の強制加入期間は20歳から60歳までですが、老齢基礎年金の支給開始年齢は65歳であり5年の空白期間があります。

 

 この65歳到達までの空白期間についても一定の障害状態に該当することにより障害基礎年金の請求を行なうことが出来ることになっていますが、老齢基礎年金の繰上げ請求を行った場合にはこの期間の間に一定の障害状態となったとしても原則として障害基礎年金の請求は出来ないことになります。

  

 原則といっているように条件によっては請求出来ることもあるのですが、その条件を満たすことは非常に難しくなり限定的となるため、この点において不利益を被る可能性があります。

国民年金(老齢基礎年金)の繰上げにおける注意点とは?①

 老齢基礎年金の繰上げ請求を行うと一生減額された老齢基礎年金を受給することとなり、後に撤回して元に戻すことが出来ないことは既に触れた通りですが、老齢基礎年金の繰上げ請求においては更に以下の点において注意を要します。

 

①国民年年金の任意加入が不可となる

 

国民年金の老齢基礎年金は20歳から60歳までの40年間において国民年金保険料か厚生年金保険料を納めることで満額(フルペンション)の老齢基礎年金を受給することが出来ますが、一定の期間が未納等であったりする場合には国民年金を満額(フルペンション)で受給することは出来ません。

 

 この場合において60歳から65歳までの期間において任意に国民年金に加入することにより老齢基礎年金を増額させることも出来ることになりますが、老齢基礎年金の繰上げ請求を行った場合にはこの増額目的の任意加入が出来なくなります。

 

②繰上げ支給の老齢基礎年金の受給権発生時点は請求日で支給開始は受給権発生月の翌月からとなる

 

 通常の65歳支給の老齢基礎年金の受給権発生時点は65歳到達日となりますが、繰上げ支給の老齢基礎年金の受給権発生時点は繰上げ請求を行った時点となり、請求時点によって年金請求権が発生することから請求年金と呼ばれます。

  

 そのため、いつ繰上げ請求を行うかによって減額率が違ってくることになるため、どの程度の減額率であれば許容できるかを検討の上、希望する月に繰上げ請求を行う必要があります。

国民年金(老齢基礎年金)の繰上げとは?

 国民年金から支給される老齢年金を老齢基礎年金といいますが、この老齢基礎年金の受給開始年齢は法律で支給開始年齢が65歳と定められており本来は65歳前に受給することは出来ませんが、65歳前に老齢基礎年金を受給することを希望して老齢基礎年金を請求することは可能であり、この請求方法を老齢基礎年金の繰上げといいます。

 

 この老齢基礎年金の繰上げ請求については、繰上げ請求を行なうことで老齢基礎年金の支給開始年齢を早めることが出来ますが、繰上げ請求を行った時点で一定額の年金が減額されて支給されることとなっており、この減額率は生年月日により以下のようになっています。

 

【昭和16年4月1日以前生まれ】

 

60歳支給開始(5年繰上げ):58%の年金額支給となり42%減額

 

61歳支給開始(4年繰上げ):65%の年金額支給となり35%減額

 

62歳支給開始(3年繰上げ):72%の年金額支給となり28%減額

 

63歳支給開始(2年繰上げ):80%の年金額支給となり20%減額

 

64歳支給開始(1年繰上げ):89%の年金額支給となり11%減額

 

【昭和16年4月2日以降生まれ】

 

 60歳支給開始(5年繰上げ):70%の年金額支給となり30%減額

 

61歳支給開始(4年繰上げ):76%の年金額支給となり24%減額

 

62歳支給開始(3年繰上げ):82%の年金額支給となり18%減額

 

63歳支給開始(2年繰上げ):88%の年金額支給となり12%減額

 

64歳支給開始(1年繰上げ):94%の年金額支給となり6%減額

 

※昭和16年4月2日以降生まれの方は1ヶ月支給を早める毎に0.5%の減額率となっているため、年ごとの繰上げではなく何月繰上げたかで減額率が決定されますが、昭和16年4月1日以前の生まれの方は年ごとの繰上げとなっている点で現在と異なります。

 

 なお、老齢基礎年金の繰上げ請求を行った場合は一生減額された老齢基礎年金を受給することとなり、一度繰上げ請求を行った場合は撤回することが出来ず元に戻すことはできませんので、老齢基礎年金の繰上げ請求を行う場合はよく検討した上で行うことが肝要であるといえます。

第3号不整合期間とは?

国民年金には国民年金第3号被保険者が存在しますが、国民年金第3号被保険者は国民年金第2号被保険者の被扶養配偶者である必要があります。

 

 例えば、上記の国民年金第2号被保険者である厚生年金被保険者の配偶者が退職した場合は国民年金第1号被保険者となりますので、上記の被扶養配偶者も国民年金第3号被保険者から国民年金第1号被保険者へと種別が変更されることになります。

 

 しかし、種別変更の届を忘れていた場合には、本来国民年金第1号被保険者となっていなければならない記録が国民年金第3号被保険者となったままである場合があり、実態と記録があっていないこの状態を第3号不整合期間といいます。

 

 この第3号不整合期間は、本来国民年金第1号被保険者期間ですので国民年金保険料納付義務が生じていたことになりますが、表面的には国民年金第3号被保険者期間となっていたため、記録の補正が生じることとなり当該期間は保険料未納期間となることになります。

 

 この問題に対応するため、当該第3号不整合期間となる期間については特定期間該当届を提出することで特定期間として受給資格期間に算入可能な期間とすることが出来ることになりましたが、届を出しただけでは将来の老齢基礎年金額には反映されないことになります。

 

 このため、当該特定期間については、平成27年4月から平成30年3月までの期間において過去10年以内に限り追納することが出来る特例追納の制度が合わせて設けられています。

 

※特例追納する時点で既に60歳以上の方については50歳以上60歳未満の10年に限り納付可能

 

また、既に第3号不整合期間のある老齢基礎年金を受給している場合には、特例追納しない場合には追納終了期間後の平成30年4月以降の老齢基礎年金額は3号不整合期間に応じて減額対象となりますが、その減額幅は訂正前の年金額の最大10%とされ、それを超える部分については減額せず訂正前の90%の老齢基礎年金が補償されることとなっています。

国民年金の振替加算とは?

国民年金には振替加算という制度があり、老齢(障害)厚生年金または退職(障害)共済年金等の配偶者加給年金額の対象となっていた方について、65歳到達時に支給される老齢基礎年金に加算され支給されます(例外的に振替加算のみの老齢基礎年金もあります)。

 

 振替加算対象者の配偶者が年上である場合には、それまで支給されていた加給年金が支給停止となり、代わりとなる形で振替加算が加算されることになりますので、振替加算対象者と配偶者が通常通りの年金請求を行っている場合は、振替加算対象者が65歳になることによって加給年金の停止と振替加算の加算が自動的に行われることになります。

 

 しかし、振替加算対象の配偶者が年上である場合には、加給年金が加算されないまま振替加算対象者が65歳になった時点で振替加算が加算されることになり、この場合には自動的に振替加算が加算されることにはならず、振替加算対象者が別に届をしなければならないため注意を要します。

 

 また、振替加算は老齢基礎年金の一部となりますので、後に配偶者と離婚等をした場合であっても失権することはありません。

 

 但し、振替加算は昭和41年4月1日以前生まれの方が対象となるため、その後の生年月日の方については振替加算が加算されることはありません。

  

 なお、振替加算は厚生年金被保険者期間が20年以上ある老齢厚生年金(退職共済年金)を受けられる方については加算されることはありません。これは自身が20年以上厚生年金被保険者となっていた場合に限らず、離婚分割による厚生年金被保険者記録の分割を受けたことにより結果的に20年以上の老齢厚生年金を受けることになった場合も含むことになるので注意が必要となります。

付加年金とは?

国民年金制度においては、20歳から60歳までの強制加入期間において国民年金保険料を納めなければなりませんが、国民年金保険料に一定額を上乗せして納めることによって年金額を増やすことが出来る制度が存在します。

 

 それが付加年金制度と呼ばれるもので、各月の国民年金保険料に400円の付加保険料を上乗せすることで付加年金として年金額を増額することが可能となっています。

 

 この付加年金制度は他の制度と比較しても非常に有利な制度となっており、400円の付加保険料を納めることで受給できる付加年金額は200円に納付月数を掛けた額となっており、仮に40年間付加保険料を納めた場合の付加年金額は96,000円となり終身年金として支給されますので、老後の所得保障という観点から可能な限り利用することが望ましい制度であると思います。

 

 また、従来は付加保険料については納付期限を過ぎたものについては納めることが出来ませんでしたが、制度改正により納付期限より2年以内のものについては納められることになっており、可能な限り納めることが将来の有利な給付に繋がってきます。

 

※過去に納付期限までに付加保険料を納めなかったことにより法律上辞退したとみなされた付加保険料については、平成28年4月1日から平成31年3月31日まで付加保険料の特例納付により過去10年に遡って納付可能です

 

 但し、付加年金は国民年金保険料と同時に納めることが前提であり、国民年金保険料を納めずに付加保険料のみを納めるということは出来ません。

 

 また、国民年金保険料と同時といっていますので、国民年金保険料を納めることが可能な国民年金第1号被保険者と任意加入被保険者が対象となっています。

 

 なお、上記の方が付加保険料を納付したい場合でも、国民年金基金に加入している場合は給付内容に付加年金部分が入っているため付加保険料を納めることは出来ない点に注意を要します。

 

※農業者年金基金は付加年金には同時加入が必要となります。

老齢基礎年金の満額とは?

国民年金保険料(厚生年金保険料)を25年以上【平成29年8月1日以降は10年以上】納めた場合は、国民年金制度からは老齢基礎年金という全国民共通の老齢年金を65歳から受給することができますが、この老齢基礎年金額には満額(フルペンション)という考え方があります。

 

 老齢基礎年金額は、20歳から60歳までの期間における保険料の納付状況によって左右され、納付状況に応じた老齢基礎年金が支給されることになりますが、20歳から60歳までの40年間(480月)全ての期間が保険料納付済期間である場合には必ず一定の額が支給されることになり、平成29年度額の場合には779,300円となっています。

 

※老齢基礎年金の満額とは固定された金額ではなく、物価等に応じて毎年度変更がありえます

 

 言い換えると、20歳から60歳までの期間以外で40年(480月)以上の期間をかけている場合でも老齢基礎年金としては満額とならないことになります。

 

※例えば22歳から厚生年金被保険者として62歳まで継続して勤務すれば480月となりますが、20歳から22歳までの期間は保険料納付済期間でない場合には老齢基礎年金は満額とはなりません。この場合は厚生年金より「経過的加算」として支給されることになるため、結果的に不利となるわけではないことになります。また、22歳から60歳まで厚生年金に加入した後、60歳から62歳まで国民年金に任意加入した場合は、国民年金の被保険者期間が40年に到達しますので、この場合は満額の老齢基礎年金が支給されることになります。

 

 また、老齢基礎年金の満額とは法律上、必ず100円単位で支給されることになっていますが、満額ではない老齢基礎年金が支給される場合には、平成27年10月以降は被用者年金一元化により1円単位による支給へと変更になっています。

国民年金第2号被保険者の退職時点の注意点

国民年金については20歳から60歳までの期間は強制加入となっており、加入を免れることが出来ないことは既に触れた通りです。

  

この国民年金の強制加入期間は40年(480月)となっていますが、40年間分被保険者として加入したからといって強制加入義務を免れるわけではありません。

  

そのため、中学生卒業後や高校生卒業後に厚生年金被保険者となり、そのまま継続して加入していた場合は60歳到達前に被保険者期間が40年に到達することがありますが、40年に到達したからといって強制加入義務は免れない以上、60歳前に退職した場合には国民年金第1号被保険者として国民年金に加入する必要があります。

  

 また、このとき、国民年金への加入は退職者自身で手続きをとらなければなりませんので、手続をとらないでそのままにしておくと保険料未納期間として扱われることになりますので注意する必要があります。

  

 なお、退職の時点で配偶者が国民年金第3号被保険者であった場合は、退職して厚生年金被保険者資格を喪失した時点で国民年金第2号被保険者から国民年金第1号被保険者となりますので、配偶者も国民年金第1号被保険者となることになり、配偶者自身で国民年金保険料を納付することとなります。

  

 補足として、厚生年金被保険者の配偶者が65歳を超えた場合は国民年金第2号被保険者ではなくなりますので、このとき相手方配偶者が60歳到達前で国民年金第3号被保険者であったとしても、厚生年金被保険者が65歳に到達する時点で国民年金第3号被保険者から国民年金第1号被保険者へと種別変更することとなり、この場合も上記と同様に配偶者自身が国民年金保険料を納める必要がでてきますが、この点は見逃しがちであるので厚生年金被保険者の配偶者が年上である場合も注意を要することになります。

国民年金保険料免除についての補足点

通常、国民年金保険料の申請免除は申請時点から適用となりますが、申請が遅れた場合は遡及して申請することも可能となっており、申請が認められた場合は2年1ヶ月前に遡って保険料免除期間とすることが出来ます。

  

 これは申請免除に限らず、学生納付特例期間や若年者納付猶予期間であっても同様に申請が認められれば2年1ヶ月前に遡及することも可能です。

  

但し、上記の申請は可能ではありますが、障害年金の保険料納付要件をみる場合に初診日以後の申請の場合は保険料免除期間や保険料納付猶予期間とすることが出来ず未納期間として扱われたり不利益となることがあります。

  

 そのため、免除や納付猶予を希望する場合は速やかに手続きをとることが非常に重要であり、遅延すればするほど自らが不利益を被ることとなってしまう点に留意が必要です。

  

 なお、法定免除の場合は、法律に定められた要件に該当した場合は当然に法定免除となるため、上記の考え方によらず届出を行った時点で該当した当初から法定免除期間となることになります。

  

国民年金保険料免除を受けた場合の老齢基礎年金額

国民年金保険料について法定免除や申請免除を受けた場合には、追納しない限りは将来の老齢基礎年金額は減額して支給されることになります。

   

 免除を受けた場合の老齢基礎年金額の考え方としては、「国の補助+免除に応じた保険料納付部分の額」を受け取るということになり、全額免除を受けている場合は国の補助部分のみ、半額免除・4分の1免除・4分の3免除を受けている場合は国の補助に加えて納付している保険料納付部分を合わせた老齢基礎年金額を受給することになります。

  

 但し、平成21年3月以前の国の補助部分についてはこの支給率が通常支給額の3分の1となっており、平成21年4月以降に支給率が通常支給額の2分の1となっているのと比較して低額となっている点に注意を要します。

  

 具体的には、全額免除の期間については平成21年3月以前であれば通常支給額の3分の1支給、平成21年4月以降であれば通常支給額の2分の1支給となります。

  

 また、半額免除・4分の1免除、4分の3免除の場合は免除に応じた保険料納付部分の額がありますので次のようになります。

  

 半額免除:平成21年3月以前は通常支給額の3分の2、平成21年4月以降は通常支給額の4分の3

  

 4分の1免除:平成21年3月以前は通常支給額の6分の5、平成21年4月以降は通常支給額の8分の7

  

 4分の3免除:平成21年3月以前は通常支給額の2分の1、平成21年4月以降は通常支給額の8分の5

  

 なお、部分免除(半額免除・4分の1免除・4分の3免除)を受けている場合に納付すべき額を未納としていると、全額免除とは異なって保険料未納期間となり、上記の額を受けることが出来なくなるので注意が必要です。

  

国民年金保険料の追納とは?

国民年金保険料については、保険料免除や保険料納付猶予を受けることで負担の軽減を図ることが出来ますが、そのままにしておいた場合、保険料免除を受けた場合には免除の内容に応じて免除を受けた月数分減額された老齢基礎年金を受給することになりますし、保険料納付猶予を受けた場合には納付猶予を受けた月数分の老齢基礎年金額が支給されない老齢基礎年金を受給することになり、何れにせよ老齢基礎年金額の減額は避けることが出来ません。

  

 この場合に、将来に向けて老齢基礎年金額を増額したい場合は追納という方法をとることが出来ます。

  

 追納とは、保険料免除や保険料納付猶予を受けた期間について、10年前まで遡って納めることが出来る制度であり、納めた期間については保険料納付済期間と同様の年金額にすることが出来ます。

  

 但し、従前と同様の国民年金保険料額として納められるのは2年目までであり、3年目以降になると一定の加算がなされた額を追納することとなるため負担が増すこととなります。

  

 しかし、保険料未納期間の場合は、国民年金保険料の納付の時効が2年となっている関係上、2年以上に遡って納めることが出来ず、それ以前の期間は保険料未納期間として確定してしまう点と比較すると、追納期間とすることができる保険料免除期間や保険料納付猶予期間については10年の期間に渡り保険料を納付することが出来る機会がある点において有利ですし、保険料未納期間とは違い受給資格期間としてみることが出来る等、比較すると保険料未納期間とするリスクがお分かりになるかと思います。

  

 なお、追納対象となる保険料免除期間と保険料納付猶予期間が混在している場合は、原則の順序は学生納付特例期間(若年者納付猶予期間は同順位)が優先し、保険料免除期間については先に経過した期間から追納するとされていますが、保険料免除期間より学生納付特例期間(若年者納付猶予期間)が後にある場合には、いずれを優先して追納するかは本人が選択できることになっています。

 

 

国民年金保険料の納付猶予とは?

国民年金保険料については、法定免除や申請免除による保険料免除制度の他、一定の方については保険料納付猶予制度を利用することが可能です。

 

 1つ目は学生納付特例制度と呼ばれるもので、一定の所得以下の学生の方であればこの制度を利用することができ、申請により国民年金保険料の納付猶予を受けることが出来ます。

 

 2つ目は若年者納付猶予制度と呼ばれるもので、50歳未満である国民年金第1号被保険者である本人および配偶者が一定の所得以下の場合には、申請により国民年金保険料の納付猶予を受けることが出来ます。

 

 これら2つの制度については国民年金保険料の納付猶予を受ける制度であり、国民年金保険料の免除を受けることとは異なり、国民年金保険料の免除を受けた場合にはその免除の内容によって将来において老齢基礎年金の額に反映されるのに対し、国民年金保険料の納付猶予を受けた場合には免除とは異なり将来の老齢基礎年金額には反映されない違いがあります。

 

 ですが、国民年金保険料の納付猶予を受けておくことで年金を受けることが出来るかを判断する受給資格期間としてみることが出来る点や、体に障害を負ったり死亡した場合の障害年金、遺族年金を受けることが出来るかを判断する期間としてみることができ、この点で保険料未納期間とは全く異なることになります。

 

 国民年金を納めることが難しい場合でも免除や納付猶予の何れかを行っておくことは将来に備えて自分の身を守ることに繋がってきますので、制度を理解し必要に応じて利用することが非常に重要なことであるといえます。

 

 

国民年金保険料の免除とは?

厚生年金適用事業所に厚生年金被保険者として雇用される場合には、給与から厚生年金保険料が天引きされるとともに、事業所がその被保険者負担分と事業所分を合わせて納付する必要がありますので保険料の免除という考え方にはなりません。

 

 それに対して国民年金被保険者の中で第1号被保険者には保険料納付義務が課されるとともに本人に納付義務が生じますので自分の収入の状況によっては国民年金保険料を納付するのが難しいということが生じることがあります。

 

※国民年金第2号被保険者は厚生年金被保険者のことを指し、国民年金第3号被保険者は国民年金第2号被保険者の被扶養配偶者を指しますので、共に国民年金保険料の納付義務は生じません

 

 この場合には、国民年金保険料の免除申請を行なうことによって保険料負担の軽減を図ることが可能です。

 

 保険料免除の種類には法定免除と申請免除があり、その中で申請免除については全額免除・半額免除・4分の1免除・4分の3免除が存在し、申請により所得に応じた免除を受けることが可能となっています。

 

※法定免除とは障害等級1・2級に該当する障害年金受給権者や生活保護法による生活扶助受給者の方等、法律上当然に保険料が免除される方を指し、届け出ることによって法定免除が適用されることになります。

 

 国民年金保険料の納付状態とは保険料納付済期間・保険料免除期間・保険料未納期間に分かれ、順に保険料を納めた期間・保険料免除を受けた期間・保険料を納めていない期間となっており、保険料免除期間は将来の年金額が保険料納付済期間と比べて劣ることになるものの保険料を納めた期間と同等の扱いを受けることが出来るのに対し、保険料未納期間は全く年金制度の恩恵を受けることが出来ない期間となるため、免除を行うかどうかで雲泥の差が生じることとなります。

  

 このことから、法定免除を除き、収入の状態から保険料を納めることが出来ない場合であっても必ず免除申請を行っておくことが重要となりますが、半額免除・4分の1免除・4分の3免除を受けた場合には免除となる部分以外の保険料について納付しなければ保険料未納期間として扱われることとなるため留意が必要となります。

  

国民年金の任意加入について

日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の方は強制加入となるのに対し、その要件に該当しない方は国民年金の強制加入の対象とはならないことは既に触れた通りですが、一定の方については国民年金に任意加入できる場合があります。

 

 それに該当するのが日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の方や、日本国籍を有し日本国内に住所を有さない20歳以上65歳未満の方などですが、これらの方々は希望に応じて国民年金に任意加入することが出来ます。

 

 但し、国民年金に任意加入できるのは国民年金の納付月数が40年(480月)未満の場合であり、言い換えると20歳から60歳までの期間において保険料未納期間や保険料免除期間がある場合には任意加入にすることが出来ますが、20歳から60歳までの期間において40年(480月)分全て納めている場合には国民年金に任意加入することは出来ません。

 

※厚生年金被保険者であった場合も、当該被保険者は国民年金第2号被保険者ですので、上記と考え方は同様になります

 

 また、任意加入したい期間に厚生年金被保険者となっている場合にも任意加入することは出来ないため留意が必要です。

 

 国民年金に任意加入するメリットは、任意加入することで老齢基礎年金の満額に近づけて終身年金額を増額する点にありますが、老齢基礎年金を繰上げ受給している場合は任意加入出来ないため留意が必要となります。

 

 また、任意加入する場合は付加年金を合わせて納付することで将来付加年金も同時に受給することが出来るため、必要に応じて納付すると有利となると考えます。

 

 なお、特例任意加入という加入もありますが、特例任意加入は年金額を増やすという考え方ではなく、老齢年金の受給権確保の観点に立つ任意加入であるため、受給権が確保できる25年の期間に達した時点で保険料納付は出来ないこととなります。

  

※平成29年8月1日以降は老齢年金の受給資格期間が10年に短縮されるため、特例任意加入可能範囲も10年の期間に短縮されることとなります

 

 

国民年金の被保険者の種類とは?

  国民年金には日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の方は強制加入となりますが、対象となる方の属性により第1号・第2号・第3号の各種被保険者に分かれることになります。

 

 まず、国民年金第2号被保険者とは、一言でいえば厚生年金に加入している65歳未満の人のことを指します。

 

 厚生年金被保険者には70歳まで加入が可能ではありますが、国民年金の制度上は国民年金第2号被保険者となれるのは65歳までであり、65歳以降は厚生年金被保険者ではありますが国民年金第2号被保険者とはならないことになります。

 

 次に、国民年金第3号被保険者とは国民年金第2号被保険者の被扶養配偶者(年収130万円未満)であり、20歳以上60歳未満の人を指します。

 

 国民年金第3号被保険者とはいわゆる専業主婦(主夫)を指しますが、国民年金第2号被保険者の被扶養配偶者となることで自身も国民年金を納めたこととすることが出来ます。

 

 但し、国民年金第2号被保険者の被扶養配偶者と言っているように、厚生年金被保険者の方の被扶養配偶者である必要があります。

 

 また、国民年金第2号被保険者の被扶養配偶者が対象ですので、65歳以上の厚生年金被保険者に扶養されている場合でも当該被保険者は国民年金第2号被保険者とはなれませんので、その場合は国民年金第3号被保険者となることは出来ませんので留意が必要です。

 

 最後に国民年金第1号被保険者ですが、上記の国民年金第2号被保険者および国民年金第3号被保険者とならない方は全て国民年金第1号被保険者となります。

 

 例えば、自営業者(個人事業主)、学生、厚生年金に加入しないパート・アルバイトの方、無職の方、国民年金第1号被保険者の配偶者等が該当します。

  

 国民年金の被保険者は上記のような分類となっていますので、その違いを把握しておくことが重要であるといえます。

 

 

国民年金に加入する人とは?

昭和61年4月よりそれまでの旧法年金制度に代わり新法年金制度に代わることとなり、全ての国民に共通の基礎年金制度が導入されています。

 

 この基礎年金制度を担うのが国民年金ということになりますが、20歳以上60歳未満で日本国内に住所を有する人は全て国民年金の被保険者となるとされており、日本国籍の有無を問わず外国籍であっても日本国内に住所を有する場合には国民年金被保険者となります。

 

※外国籍の方で社会保障協定に基づく手続きにより適用除外となっている場合を除きます

 

 つまり、自営業者や専業主婦(主夫)の場合だけではなく、学生や無職等であっても上記の年齢に該当する場合には国民年金へは強制加入となりますし、会社員等で厚生年金に加入する場合でも国民年金へは同時に加入するという扱いになります。

 

 また、強制加入となる方以外に任意加入となる方もありますが、日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満である場合や、日本国籍の方が外国居住時の20歳以上65歳未満の期間など限定された状態での加入となっており強制加入が基本となっています。

 

※受給資格期間がない方が65歳から70歳までの期間で加入する特例任意加入もあります

  

 上記のように日本国内に住所を有する方については基本的に国民年金には強制加入となりますので、制度を理解して学生納付特例や若年者納付猶予制度、免除制度などを利用して保険料を未納期間としないようにすることが重要であるといえます。

 

 

年金からの控除対象となるものとは?

年金からは給与と同様に様々なものが控除されることとなっており、次のようなものが控除の対象となっています。

 

 まずは老齢年金の受給者に課される所得税であり、一定の年金額以上となる場合に復興特別所得税分を含めて源泉徴収が行われます。

 

 また、65歳以上である場合には、介護保険料や国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、住民税などが年金から控除されることとなっています。

 

 但し、介護保険料については18万円以上の年金を受けている場合には年金から徴収(特別徴収)されますが、18万円未満の場合は納付書による普通徴収により納めることとなりますし、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料についても特別徴収による場合と普通徴収による場合があります。

 

 住民税については年金による所得に応じた住民税は徴収の対象となりますが、他の所得に応じた住民税は別に納める扱いとなります。

  

 年金からの各種控除については各個人ごとに内容も異なりますが、各種控除の内容については年金事務所ではなく取り扱っている各自治体や税務署への照会が必要となります。

 

 

生計維持確認届とは?

老齢年金や障害年金等には内容に応じて一定の場合に加給年金が加算されることがありますが、加給年金が加算されるには生計維持要件の確認が必須となっており、請求時点において戸籍や住民票、所得証明等により生計維持関係の確認が行われることになっています。

 

 言い換えると、生計維持関係が解消されている場合には加給年金は支給停止となることになりますが、法律上当然に加給年金が停止されることとなる場合を除いて、基本的に生計維持関係の確認は本人の申告によらざるをえないことになります。

 

 そのため、加給年金が加算されている方に対し、生計維持関係の確認を行なうために毎年1回誕生月に生計維持確認届が送付されることとなっており、これにより生計維持関係の確認を行えた場合に加給年金を支給することとしています。

 

 

 ですので、生計維持確認届の提出を忘れたままであると生計維持関係の確認が行えないこととなりますので、加給年金が一時差し止めされることになりますので、対象者の方は忘れずに提出が必要となります。

 

 

源泉徴収票とは?

年金給付は老齢年金、障害年金、遺族年金の3つに分類されますが、このうち障害年金と遺族年金は所得税については非課税となっていますが、老齢年金は雑所得として所得税の課税対象となっています。

 

 また、老齢年金の所得税の徴収方法としては源泉徴収と呼ばれ、老齢年金から直接所得税を控除する仕組みになっています。

 

 但し、年金額が一定額に達しない場合には、この源泉徴収は行われないことになっており、65歳未満の場合は108万円、65歳以上の場合には158万円を超えない場合には源泉徴収は行われないこととなります。

 

※65歳未満の場合には公的年金控除として70万円、65歳以上の場合には120万円が設定されており、更に個人ごとに基礎控除が38万円あるため、合算して上記の額に達しない場合には結果的に年金から所得税は控除されないということになります

 

 言い換えると、老齢年金額が上記の額以上となる場合には所得税が源泉徴収されることになりますので、この場合には扶養親族等申告書により各種控除について申立てていないと所得税が多めに源泉徴収されることとなります。

 

 なお、毎年1月中旬頃には上記の源泉徴収の内容について源泉徴収票が交付されることとなりますので、確定申告をする場合等、必要に応じて使用することとなります。

 

 

65歳のハガキとは?

現在は、法律上は年金の受給開始年齢は原則として65歳となっていますが、段階的に年金の支給開始年齢が引き上げられている状態であり、65歳前に年金を受給する方は基本的に特別支給の老齢厚生年金を受給することになっており、この特別支給の老齢厚生年金を受給するためには年金請求の手続きが必要であることは既に述べた通りです。

  

※恩給や退職共済年金、いわゆる旧法年金等、一部上記以外の給付を受けている方については上記の考え方とは異なります

  

 ですが、法律上の本来の老齢年金の支給開始年齢は65歳であり、上記の経過的な給付の位置付けである特別支給の老齢厚生年金とは制度上別制度であり、特別支給の老齢厚生年金を受給している場合でも本来の老齢年金の請求手続きが必要ということになっています。

  

 とはいえ、一度行った老齢年金の請求手続きと同様の煩雑な手続きを再び行うのは請求者にも事務側にも効率的とはいえません。

  

 そのため、特別支給の老齢厚生年金から本来支給の老齢基礎年金、老齢厚生年金へ移行する手続きをハガキで行うこととしています。

  

 この65歳時点で届くハガキはれっきとした「年金請求書」であり、ハガキにもその旨が記載されていますので、ハガキを提出しないことは年金請求を行わないことになることになりますので留意が必要です。

  

※特別支給の老齢厚生年金は65歳到達時点で失権します

  

 なお、65歳のハガキによる請求書は、同時に加入年金が支給開始となる場合には、生計維持関係証明書類を兼ねることとなり、加給年金が加算されない方と比べて記載内容が増えるため、この点にも留意が必要となります。

 

 また、65歳時点で請求が必要ない方(厚生年金被保険者期間が1年未満の方、国民年金期間しか無い方、共済組合期間しかなく老齢基礎年金が65歳時点で発生する方など)の場合は65歳時点で請求を行う必要がありますし、女性の方で共済組合と厚生年金被保険者期間をお持ちの方の場合は厚生年金の受給開始年齢が異なるため特別支給の老齢厚生年金の請求が2度必要となるなど、一律に上記の請求と同じとなるわけでは無いことにも留意が必要となります。

 

 

扶養親族等申告書とは?

老齢年金については給与所得等と同様に雑所得として所得税の対象となっています。

 

※障害年金および遺族年金は非課税となっています

 

 この老齢年金の所得税について老齢年金から所得税を徴収する仕組みを源泉徴収といい、所得税は老齢年金から差し引いて徴収されることになっています。

 

 但し、年金には公的年金控除として65歳未満であれば70万円、65歳以上であれば120万円が控除される仕組みとなっており、さらに、基礎控除の38万円を合わせた額(65歳未満では108万円、65歳以上では158万円)を老齢年金額が超えなければ源泉徴収は行われないことになっています。

 

 しかし、上記の額を超える場合には老齢年金から源泉徴収が行われることになるため、これに対する各種の控除を適用するために扶養親族等申告書の提出が必要ということになります。

 

 この扶養親族等申告書を提出しなかった場合は、一律に高い率で所得税が源泉徴収されることになるため、清算するには後で確定申告が必要ということになるため注意が必要です。

 

 なお、申告書の提出が遅れた場合でも受け付けてもらえることがありますので、遅れた場合でも申告書の提出を希望する場合には年金事務所に相談をお勧め致します。

 

 

離婚分割とは何?

離婚分割制度とは平成19年4月以降に請求できるようになった制度であり、婚姻期間中の相手方配偶者の厚生年金被保険者記録の分割を請求するものです(合意分割といいます)。

  

また、平成20年4月以降はいわゆる3号分割という国民年金第3号被保険者だった期間における分割内容についての制度改正もなされており、離婚分割請求内容の拡大が図られています。

  

 この離婚分割においては、最大50%の割合において婚姻期間中の相手方配偶者の厚生年金被保険者記録の分割を請求できますが、請求期間は離婚後2年以内であり、期間を渡過した場合は裁判が確定していない等の一定の事由を除いて請求が認められないため注意を要することになります。

  

 また、平成20年4月以降の3号分割による分割のみの場合は、相手方配偶者の厚生年金保険料を共同で負担したという考え方に基づき、分割割合は50%で決定され、相手方配偶者の同意なく分割請求を行なうことができるという違いがあります。

  

 その他の注意点としては、上記に挙げた通り平成19年4月以降の離婚が対象で、かつ、離婚後2年以内の請求が必要であることの他、3号分割はあくまで平成20年4月以降の国民年金第3号被保険者期間が対象となるため、これ以前の第3号国民年金被保険者期間に基づく分割は合意分割となります。

  

 なお、補足点として、離婚分割制度とは相手方配偶者に支給される年金額を分割する制度ではなく、婚姻期間に応じた相手方配偶者の厚生年金被保険者記録を分割するという制度であるため、厚生年金被保険者記録の分割を受けたとしても本人に年金受給権が無い場合には厚生年金として支給されることはありません。

  

 言い換えると、厚生年金の受給権がある場合には分割された被保険者記録に基づき厚生年金額が増額されますが、年金受給権が無い場合には厚生年金としては支給されないということになります。

  

 これは、国民年金のみの受給権があり国民年金を65歳から受給する方が厚生年金被保険者期間の分割を受けた場合でも、実際の国民年金の支給開始年齢である65歳まで厚生年金は支給されないということでもあります。

 

 

年金支給月とは?

年金支給月とは、年金の受給権を得た方が実際に年金を受け取ることとなる月のことであり、この支給月は原則として2月・4月・6月・8月・10月・12月の各偶数月の15日に設定されています。

 

 また、1月・3月・5月・7月・9月・11月の各奇数月の15日に支給されることとなることがあり、この奇数月に支払いとなる場合を随時払いといいます。

 

 通常であれば年金の支給は年金支給月である各偶数月の15日に支払われることとなりますが、年金の請求手続きが遅れたり年金の支給額に変更が生じる等、一定の事由が生じることにより手続きが各偶数月の15日までに間に合わないときには、各奇数月の15日に随時払いとして支給されるという流れになっています。

 

 なお、年金支給は後払いとなっており、2月分でいえば年金支給年の前年の12月と当年1月分の支給、4月分でいえば当年2月分と3月分の2ヶ月分の支給ということになります。

 

 補足として年金額に改定がある場合は、例えば4月に改定事由が生じて5月分から年金額が改定されることになった場合、4月分の年金額は改定前、5月分の年金額は改定後の年金額ということになり、6月15日に支給される年金額は改定前と改定後の年金額が混在することになり、改定後の年金額で2ヶ月分が支給されるのは次回支給日である8月15日からということになります。

 

 

ねんきん定期便とは?

ねんきん定期便とは平成21年4月より始まった制度であり、毎年、誕生日になると年金加入記録の確認等の様々な案内が届くようになっています。

 

 現在においては、通常の誕生日にはハガキによる定期便で直近1年間の加入記録が通知されますが、一定の節目の年齢である35歳、45歳、59歳の人にはこれまで加入した年金の全ての記録が記載された通常とは異なる年金定期便が送付されることになります。

 

※被用者年金一元化以降の年金定期便は共済組合についての年金記録等も合わせて通知されています

 

 この定期便で通知された記録の中で漏れている記録や誤りである記録がある場合には将来の年金受給額に影響を及ぼすため、年金加入記録回答票による照会や実際に年金事務所において年金加入記録の確認を行なうことが重要となります。

 

 なお、年金定期便には基礎年金番号ではなく照会番号という番号が付番されていますが、基礎年金番号が分からない場合でも照会番号があれば基礎年金番号に基づく年金相談は可能です。

 

 また、年金番号が分からない場合でも個人番号(マイナンバー)が分かれば問題なく年金相談は出来ますので留意が必要です。

 

 

年金額の端数処理とは?

現在の年金制度は平成27年10月の被用者年金一元化という改正により、共済年金は原則厚生年金に合わせる形で厚生年金に統一されましたが、年金額の支給時の端数処理の考え方もこの時に変更となっています。

 

 変更点としては、平成27年10月前の年金額の支給単位は100円単位となっていたのに対し、平成27年10月以降は1円単位の支給となっています。

 

 具体的には、100円単位の時は50円以上切り上げ、50円未満切り捨てとなっていましたので端数が50円であれば100円に、49円であれば切り捨てとなっていたのに対し、1円単位への変更以降は50銭以上切り上げ、50銭未満切り捨てとなりますので端数が0.5円であれば1円に、0.49円であれば切り捨てとなります。

 

 また、この変更に伴い100円単位での支給のときの支給時に1円未満の端数は切り捨てられていたのに対し、被用者年金一元化以降は一旦は切り捨てとなりますが、切り捨てがなされた翌年の2月にその切り捨てられた端数を合算してまとめて支給されることになっています。

 

 補足として、原則として年金額は上記のとおり1年単位となりますが、加給年金や中高齢寡婦加算、満額の老齢基礎年金等の一定のものについては100円単位で支給されることとなっており、全てのものについて1円単位の年金額が適用されるわけではない点には注意を要することになります。

 

 

年金記録の訂正とは?

年金制度は昭和61年4月を境にその前の期間を旧法制度が、以降を新法制度となっていることは既に触れている所ですが、現在の新法制度と比べて旧法制度においては制度統一の基礎年金制度が存在せず、制度ごとに年金を統括していたため個人ごとに番号を複数持っていることがあります。

  

※この旧法制度における番号を手帳番号といいますが、共済組合では番号を付番することはなかったため共済組合員期間のみであった方の場合は基礎年金番号のみを付番されていることになります。

  

 複数の手帳番号を持っている方の場合は、その番号ごとに年金記録が管理されているため、番号を統合する手続きをとっていない場合には年金記録が別々になっている場合があります。

  

※他に、戦時中の記録や自衛隊などの共済組合期間など、手帳番号とは関連しない期間も存在しますのでその点には留意を要します。

 

 これらの記録の訂正によって年金額が増額になる場合には、年金給付にかかる5年の時効が適用されず、遡って本来受け取るべき年金額を遅延特別加算金を加えて受け取ることが出来ることになっています。

  

 また、記録訂正時点において本人が死亡している場合は、未支給年金対象者の遺族が未支給年金として受給することが出来ることになります。

  

 但し、時効が適用されないためには年金記録の訂正があることが前提であり、請求が5年以上遅れるなどの年金記録訂正以外の理由による遅延の場合には年金時効特例法が適用されず原則通り5年の時効が適用されることになります。

 

 

年金は民間の保険と同様に請求によって受給権が発生する

 老齢年金、障害年金、遺族年金のいずれの年金においても、保険事故(老齢であれば支給開始年齢、障害であれば障害となったとき、遺族であれば対象被保険者の死亡)が発生したからといって自動的に年金が支給開始となるわけではなく、保険事故が発生して後、自ら請求を行う必要があります。

 

 また、年金は保険事故が発生した時点から請求の有無に関係なくその時点から年金の支給を受けることが出来る年金(実際に支給を受けるには請求をして年金受給権を発生させることが必要)と、年金の支給開始自体が請求後に発生する年金があります(請求年金)。

 

 例えば、通常の老齢年金は支給開始年齢に到達するとその時点から支給を受けることが出来る年金であり、例えば、本来60歳から特別支給の老齢厚生年金を受けることが出来る方が61歳時点で請求したとしても60歳時点から年金を受けることが出来るということになります。

 

 これに対して年金の支給開始自体が請求後に発生する年金としては、上記の老齢年金の例でいえば老齢年金の繰上げ請求や繰下げ請求がこれに該当し、例えば65歳支給開始の年金を66歳に繰下げ請求する場合は、65歳からではなく66歳から増額した老齢年金を受けることが出来るということになり、請求時点で年金の支給が開始となります。

 

 なお、請求の有無に関係なくその時点から年金の支給を受けることが出来る年金であっても5年で時効の適用対象となるため、請求せずにそのままにしておくことは自ら債権を放棄していることに等しいこととなるため、請求ができるようになった時点で速やかに請求することが重要であるといえます。

 

 

老齢年金の受給開始年齢

老齢年金の受給開始年齢は国民年金、厚生年金保険、共済組合各制度のいずれにおいても原則として65歳支給開始となります。

 

 但し、国民年金により支給となる老齢基礎年金とは異なり、厚生年金保険と共済組合による厚生年金保険は制度上は昭和61年4月の法改正により65歳支給開始となっていますが、法改正により即日65歳支給開始とすることは現実的に難しいため、平成6年・平成12年改正により年齢に応じて特別支給の老齢厚生年金を支給することとされています。

 

 「特別支給」といっているように年齢に応じて段階的に引き上げられており、将来的に特別支給の老齢厚生年金は支給されないことが決まっています。

 

 ただ、第1号厚生年金被保険者(共済組合から移行した方でない方)の場合で、女子の場合は支給終了となる年齢が男子に比べ5歳開きがあり、男子が昭和36年4月1日生まれまでの方なのに対し女子は昭和41年4月1日生まれまでの方が、65歳前に特別支給の老齢厚生年金を受給することが可能です。

 

 なお、共済組合加入員であった第2号~第4号厚生年金被保険者の場合は、男子と女子のいずれも支給終了となる年齢は昭和36年4月1日生まれまでの方であり、第1号厚生年金被保険者のような5歳の開きはありません。

 

 そのため、女子の方で第1号厚生年金被保険者期間の他に第2号~第4号厚生年金被保険者期間を持っている場合は、老齢厚生年金請求の時期がずれることがあり、結果的に2度請求手続きを要することがありえます。

 

 

手帳番号と基礎年金番号とは?

年金制度は旧法時代においては各制度が独立して混在していたため、その制度ごとに番号が付けられていることがあり、これを手帳番号として管理していました。

 

※共済組合の場合は被保険者記録により管理していたため、国民年金や厚生年金のように手帳番号がない点が異なります

 

 そのため、複数の制度を渡り歩いている方の場合は、手帳番号をいくつも付番されていることがあり、昭和61年4月に基礎年金制度により制度の統一がなされたにもかかわらず、これが制度の管理をより複雑にする原因となっていました。

 

 そこで、平成9年1月よりこれらの手帳番号を統一する手続きがとられることとなり、これが基礎年金番号制度と呼ばれる制度として運用されることとなります。

 

※共済組合にのみ加入されていた方は、この時に初めて基礎年金番号が付番されることとなったため、年金手帳ではなく基礎年金番号通知書が送付されています

 

 現在は、この基礎年金番号を1人1人付番することによって制度の手続も行えるということになっていますが、個人番号(マイナンバー)の運用も始まっていますので、後々はマイナンバーによる運用も視野におかれることとなると考えます。

 

 

年金の新法と旧法とは?

年金は昭和36年に国民皆年金となりましたが、その時点では皆年金とはいえ、加入する制度はそれぞれの実態に応じて国民年金、厚生年金、共済年金と加入する制度が異なっており、かつ、制度ごとに別々に年金を取り扱っており、複数の制度を渡り歩く方にとっては非常に不利な制度体系となっていました。

 

※旧制度においては通算年金通則法が出来るまでは制度ごとに被保険者期間を通算することが出来なかったため、その年金制度ごとの年金を受給するための期間を満たせない方は脱退一時金を受給するような仕組みとなっていました

 

 そのため、昭和61年4月より制度共通の基礎年金制度をおくことにより制度の統一がなされることになり、それにより複数の制度を渡り歩く方でも全ての期間を制度統一の年金の受給資格期間としてみることが出来るようになっています。

 

※基礎年金制度は国民年金、厚生年金保険、共済組合のいずれの年金制度に加入する場合でも適用されることになるため、例えば老齢年金の場合でいえば、老齢基礎年金はこれらの全ての制度の期間を勘案して老齢基礎年金の受給の有無および老齢基礎年金額をすることになりますが、老齢厚生年金額については厚生年金保険や共済組合の被保険者期間に応じて年金額を決定することとなる違いがあります

 

 この昭和61年4月を境として、昭和61年3月以前を旧法年金、昭和61年4月以降を新法年金といい年金の名称など様々な点で異なっており、いつの時点で年金受給権を得ることになるのかによって旧法年金か新法年金のいずれの年金を受給することになるかが決まります。

 

 現在では新法年金制度が適用となっていますが、上記の理由で旧法年金を受給されている方が相当数おられるということになります。

 

 なお、共済年金は老齢年金でいえば、旧法年金は退職年金(通算退職年金)、新法年金は退職共済年金となっていますが、被用者年金一元化以降は老齢厚生年金となっており、その意味で退職共済年金も旧法の一つであるといえます。