加給年金とは

加給年金は、特別支給の老齢厚生年金(退職共済年金)や65歳以後の老齢厚生年金(退職共済年金)受給権者の被保険者期間(組合員期間)が240月以上の場合か、中高齢の特例で受給権を得た場合(以下「老齢満了」と言う)に、生計維持する配偶者や18歳到達年度の末日までの間の子がいるときに受けることができます。

なお、特別支給の老齢厚生年金については、定額部分が支給されなければ加算されないため、定額部分が支給される人は、その支給開始時から加算されます。定額部分支給開始後に老齢満了となる場合は、退職改定時または65歳決定時に改定処理されないと加算されません。

加給年金は、配偶者が65歳になるまで受給権者の年金に加算される(配偶者ではない)ものですが、配偶者自身が老齢満了の老齢厚生年金(退職共済年金)や障害年金(障害共済年金)を受けられる間は支給停止されます。

配偶者の加給年金は配偶者が65歳到達すると消滅し、子の加算は、18歳到達年度の末日(1・2級の障害の状態にあるときは20歳の到達日)で消滅します。

加給年金額は、配偶者と2人目までの子が224,500円で3人目以降の子が74,800円です。

また、昭和9年4月2日以後に生まれた受給権者には、さらに次の表の額が配偶者特別加算額として加算されます。

     受給権者の生年月日         特別加算額   加給年金額の合計額

 昭和9年4月2日~昭和15年4月1日    33,300    259,600   
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日    66,800    293,100
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日   100,200    326,500
昭和17年4月2日~昭和18年4月1日   133,600    359,900
     昭和18年4月2日以後      166,900    393,200

※受給権者の配偶者が、大正15年4月1日以前生まれである場合は、旧法適用者のため、65歳になっても配偶者自身の老齢基礎年金が発生しないため、65歳以降も加給年金額が支給されます。

① 届出方法

 ⅰ 加給年金を加算するとき

 ア 年金請求と同時の場合
 ⇒請求書に戸籍の謄本・世帯全員の住民票・加給対象者の所得証明を添付(三点セット)

 イ 年金請求後に老齢満了した場合

  a 65歳到達前に老齢満了した場合は、配偶者状態表示に登録があれば、退職改定時に日本年金
   機構から「生計維持申立書」が送られるので年金事務所へ提出します。


  b 65歳到達時またはそれ以後に老齢満了した場合は、配偶者の基礎年金番号の登録があれば、
   日本年金機構から「年金受給権者の皆様」と「老齢厚生年金・退職共済年金加給年金額開始事由
   該当届」(様式第229号)を同封したお知らせが行きます。当該書に年金請求と同様3点セッ
   トを添付し、年金事務所へ提出します。


 ウ 定額開始年齢に達した場合
 
  a 現況届による生存確認が必要な場合は、「年金受給権者現況届」(生計維持申立書)(薄緑色
   のハガキ)が送付されます。


  b 住民基本台帳ネットワークシステム(以下住基ネット)の活用により現況届が不要な場合や特
   別支給の老齢厚生年金
の年金決定年月日から1年未満または在職中などにより同年金の全額が
   支給停止となっている場合は、「老齢厚生年金加給年金額加算開始事由該当届」(生計維持申立
   書)(ピンク色のハガキ)が送付されます。


 上記ウのa・bに該当する場合、受給権者は引き続き加給年金対象者の生計を維持している場合には必要事項を記入し、日本年金機構に返送します。

 ⅱ 加給年金が不該当となるときまたは停止するとき
 
 ア 加給対象者が死亡(離婚)等したとき
 ⇒「加算額・加給年金額対象者不該当届」(様式第205号)を提出します

 イ 加給対象者が老齢(退職)年金・障害年金を受けられるとき
 ⇒「老齢・障害給付加給年金額支給停止事由該当届」(様式230号)を提出します

 ⅲ その他

 ア 加給対象者が老齢満了した老齢(退職)年金または障害年金を受けているために加給年金が停止
  されていたがその年金が全額支給停止になったとき

 ⇒「老齢・障害給付加給年金額支給停止事由消滅届」(様式第231号)と戸籍・年金が受けられな
  いことがわかる書類を添付して提出


 ※受給している年金が老厚・障厚(共に新法)であれば届出は不要ですが、旧法厚生年金・共済年金(三共済【JR、NTT、JT】含む)、障害基礎年金の場合は提出が必要

 イ 加給対象者である子が障害の状態になったとき
 ⇒「加算額・加給年金額対象者の障害該当届」(様式第214号)に所定の診断書を添えて提出しま
  す


② 受給要件
 
 ⅰ 加給年金額の支給停止
 ⇒配偶者が国民年金法・厚生年金保険法・共済組合法などによる老齢厚生年金及び障害厚生年金等を
  受けられる間は、加給年金額が支給停止されます(老齢厚生年金、退職共済年金は、厚生年金保険
  の被保険者期間または共済組合等の加入期間が20年(中高齢の期間短縮の特例15~19年など
  に該当する人はその期間)以上ある者に限ります)。


 ※配偶者の年金が全額支給停止されている場合は、加給年金額は支給されます。逆に一部でも支給されている場合は全額支給停止になります。

 ※配偶者の年金ではなく、加給年金を受けられる老齢厚生年金等の受給権者の年金が全額支給停止の
  場合は、加給年金は全額支給停止になります。逆に一部でも支給されている場合は全額支給される
  ことになります。


 ※上記の2点は混同しやすい所ですので、注意されると宜しいかと思います。

 ⅱ 生計維持関係の認定
 ⇒加給年金額は、特別支給の老齢厚生年金または65歳以後の老齢厚生年金の受給権者がその権利を
  取得した当時(額の計算の基礎となる月数が240月未満であったときは、退職時改定により額の
  計算の基礎となる月数が240月以上に至った当時、また、昭和16年(女子は昭和21年)4月
  2日以後に生まれ、定額部分が支給される人は定額部分の支給開始年齢到達時(障害者・長期加入
  者の特例該当者の定額部分の支給開始時))において、加給年金額の対象者が生計維持または年齢
  や障害の条件を満たしていなければ加算されません。


 ⅲ 加給年金額
 ⇒加給年金額(平成28年度)は、以下の様になります

       配偶者              224,500円
   1人につき(2人目まで)         224,500円
       3人目から             74,800円

 ⅳ 加給年金額の改定
 
 ア 胎児であった子が生まれたとき
 ⇒受給権発生当時胎児であった子は、出生した時に受給権者が受給権取得当時、受給権者によって生
  計を維持していた子とみなされ、出生の月の翌月から加給年金額が加算され、年金額が改定されま
  す。


 イ 加給年金額対象者の不該当
 ⇒加給年金額の対象となっている人が、次のいずれかに該当したときは、加給年金額の対象から除外
  され、該当した月の翌月から年金額が改定されます。


  a 死亡した時
  b 受給権者による生計維持の状態が止んだとき
  c 配偶者が離婚したとき
  d 配偶者が65歳に達したとき(大正15年4月1日以前生まれの配偶者を除く)
  e 子が養子縁組によって受給権者の配偶者以外の人の養子となったとき
  f 養子が離縁したとき
  g 子が婚姻したとき
  h 子について18歳到達年度の末日が終了したとき(障害等級1級または2級の障害の状態にあ
   るときを除く)

  i 子が18歳到達年度の末日が終了した後、1級または2級の障害の状態に該当しなくなったと
   き

  j 1級または2級の障害の状態の子が20歳に達したとき

③ 提出後の処理について
⇒加算・不該当・停止のいずれの場合であっても年金事務所に提出すると、内容審査後に日本年金機構で諸変更処理がなされた後、調整がある場合は調整がなされます。このとき診断書提出がある場合は、通常より時間がかかります。

④ 受給権者あての通知
⇒加算、消滅、停止のいずれかの場合には、支給額変更通知書で年金額の変更の通知を行います。

⑤ その他留意事項

 ア 受給権者の配偶者情報が正確であれば自動処理も正確に行われるため、年金請求時には正確な登
  録が重要です。


 イ 旧法の受給権者の場合は配偶者情報が十分でない場合があるので、事前の確認が重要です。

 ウ 統合共済や旧法受給者が配偶者の場合、届出がなければ処理が行われません

 エ 加給年金加算開始事由該当届に添付する所得証明

  a 特別支給の老齢厚生年金請求時(定額発生前):請求日

  b 特別支給の老齢厚生年金請求時(定額発生後):定額発生時

  c 老齢基礎年金繰下げ請求時:請求時点
 
  d 年金決定後に老齢満了時:老齢満了した時点

 オ 生計維持関係を判断する場合の収入は年間850万円未満(所得で655万円5千円未満)で、
  相続や譲渡などの一時所得は含まず、事業所得等は必要経費を除いた額を所得とする。ただし、加
  給対象者に該当したとき850万円以上であっても、概ね5年以内に定年退職等で収入が明らかに
  減少することが就業規則等で証明できる場合は加給対象者になります。


⑥ 加給年金額と振替加算の関係
⇒老齢厚生年金または退職共済年金の受給権者の配偶者の老齢基礎年金に振替加算が行われるのは、夫婦とも大正15年4月2日以後に生まれた場合で、夫婦どちらかが大正15年4月1日以前に生まれた場合は、振替加算は加算されません。

※夫と妻の両方もしくはどちらかが大正15年4月1日生まれの場合は、振替加算ではなく加給年金が継続して支給されます。振替加算が行われるのは、両者とも大正15年4月2日以後生まれで、加給年金が支給されかつ配偶者に合算対象期間の特例を除いて老齢基礎年金の受給資格がある場合です。なお、振替加算が加算されるのは昭和41年4月1日生まれの者までです。

※昭和61年4月1日前に老齢(退職)年金の受給権のある大正15年4月2日以後生まれの人を含みます。但し、共済組合が支給する退職年金または減額退職年金の受給権者は、昭和61年3月31日現在で55歳の者以上が対象になります。