国民年金第3号被保険者期間に係る保険料納付要件

 国民年金第2号被保険者の被扶養配偶者である方は、届出をすることで国民年金第3号被保険者として国民年金保険料の納付を免れることとなりますが、障害年金の請求上はこの届出が遅れることにより以下の内容で大きな影響を被ることになります。

 

①第3号被保険者の特例届出(通称3号特例)関連

 

 現在は国民年金第3号被保険者資格取得届を事業主を経由して提出することになりますが、以前はこの届出を個人で行わなければならなかった結果として多くの届出漏れが発生し、届出漏れ期間が保険料未納期間と同様の期間となっていました。これを解消するため、平成17年4月以後はこの特例届出をすることで、本来届出の時点から2年間しか遡及して保険料納付済期間とならないところ、特例的に2年前以前の期間についても保険料納付済期間とされることになっています。しかし、障害年金制度上は届出を行った時点から2年までの期間は保険料納付済期間となりますが、その期間を超えた2年前以前の特例による納付済期間は保険料未納期間の扱いとなり、保険料納付要件を満たせないことが現実としてありえます。障害年金請求をする場合にこの3号特例期間がある場合にはこの点で注意を要することになります。

 

②年金確保支援法関連

 

 ①とは異なり国民年金第3号被保険者記録として登録されている場合でも、記録が事実とは相違している(いわゆる3号不整合問題)場合があります。例えば、ずっと3号記録であったところに新たに別の被保険者記録が見つかった場合や、配偶者が一時期退職してその後再就職しているが、その退職している期間は本来は国民年金第1号被保険者となるべきですがそのまま国民年金第3号被保険者期間になっていた場合等が挙げられます。この挙げられたケースにおいては、国民年金第3号被保険者期間から他の被保険者期間となり再び国民年金第3号被保険者期間という変遷を辿っています。この変遷を辿るケースである場合、再び国民年金第3号被保険者となった時点における国民年金第3号被保険者資格取得届が抜け落ちているため、本来は届出時から2年までの期間しか保険料納付済期間とならないことになりますが、年金確保支援法による届出をすることで当初から国民年金第3号被保険者期間とすることが出来るようになります。なお、年金確保支援法の施行前に既に記録訂正していた方についても、同様の事案である場合には当初より保険料納付済期間とすることが出来ます。

 

③時効消滅不整合期間関連

 

 本来は国民年金第1号被保険者であるにもかかわらず国民年金第3号被保険者のままであった期間がある場合には、その不整合であった期間のうち、国民年金第3号被保険者種別変更届の提出が2年以上遅れている期間については時効消滅不整合期間として保険料未納期間と同様に扱われることになります。この時効消滅不整合期間については、時効消滅不整合期間に係る特定期間該当届を提出することで特定期間という受給資格期間ではあるが年金額には反映しない期間となりますが、障害年金制度上は届出の効果は届出日以後に発生することになるため、初診日以後に届出を行った場合でも受給資格期間には算入されず保険料未納期間として扱われることになります。但し、以下の特例の救済措置があります。

 

  1. 平成25年6月26日から平成25年9月30日までの期間に初診日がある方

    平成25年6月26日前に記録訂正が行われている場合で、平成25年6月26日から平成25年9月30日までに特定期間該当届を提出しているか、平成25年6月26日以後に手続漏れが判明した場合で、平成30年3月31日までに特定期間該当届を提出しているいずれかであれば、特定期間該当届の手続の効果が初診日の前日に発生します。


  2. 平成25年6月26日から平成30年3月31日までの期間に初診日がある方

    平成25年6月26日以後に手続漏れが判明した場合で、平成30年3月31日までに特定期間該当届を提出していれば、特定期間該当届の手続の効果が初診日の前日に発生します。

 上記の特例に該当する方は、速やかに特定期間該当届の提出を行うことが重要となります。なお、特定期間については平成27年4月から平成30年3月までの期間において特例追納を行うことも出来ます。

 

※特例追納とは、追納の意思表示をした時点で60歳以上の場合は50歳以上60歳未満の期間、60歳未満の場合は追納の意思表示時点から過去10年間において特定期間となった期間について保険料を納めることが出来る制度を指します。また、これに関連する内容として時効消滅不整合期間が判明した方が既に老齢年金を受給していた場合は、特定受給者として平成30年3月分までの老齢基礎年金額は保障されますが、平成30年4月以降は訂正前の年金額の90%を限度として、記録に基づき減額した老齢基礎年金が支払われることになっているため、この点で特例追納が活用できるということになります。

 

 また、時効消滅不整合期間に係る障害年金を既に受給している場合には、当該時効消滅不整合期間を保険料納付済期間とみなすこととされているため、この点において障害年金の失権はないことになります。