厚生年金の老齢年金は、昭和60年の年金法の改正で65歳から老齢基礎年金と一緒に支給することになり、60歳から64歳までは特別支給の老齢厚生年金として支給する仕組みに変わりました。平成6年改正及び平成12年改正で特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢を段階的に引き上げることになり、現在は女性の場合を除いて定額部分の引き上げが終了し、報酬比例部分の引き上げが行われています。支給開始年齢については、生年月日により異なり、報酬比例部分の支給開始年齢を引き上げて、最終的には昭和36年(女性は41年)4月2日以後の生まれの人は、65歳支給になります。
ただし、定額部分が支給されない場合でも、次の条件に該当したときは報酬比例部分と合わせて定額部分も支給されます。
a 障害等級に該当し、既に退職している人が請求したとき(障害者特例)
b 被保険者期間が44年(528月)以上で資格を喪失しているとき(長期加入者特例)
他に坑内員・船員特例もあります。
また、受給資格要件は、被保険者期間が25年以上ですが、改正前の厚生年金保険法では、20年以上で要件を満たしていたため、これについても昭和60年の改正で段階的に25年に引き上げることになりました。したがって、生年月日により受給資格要件が異なることになります。
① 受給要件
⇒厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あり、老齢基礎年金の受給資格期間を満たせば、特別支給の老齢厚生年金を受けられます。また、次の資格期間短縮特例の要件を満たした人も特別支給の老齢厚生年金を受けられます。
ⅰ 被用者年金制度の加入期間の特例に該当する場合
⇒昭和31年4月1日までの被用者年金制度の加入期間が24年以上ある者。これは昭和27年4月
1日以前生まれの場合は加入期間20年で要件を満たし、以降は昭和31年4月1日まで段階的に2
4年まで引き上げられることになります。
ⅱ 40歳(女性及び坑内員・船員は35歳)以後の厚生年金保険の加入期間の特例(中高齢の特例
)に該当する場合
⇒昭和26年4月1日までの厚生年金保険制度の加入期間が19年以上ある者。これは昭和22年4
月1日以前は15年で要件を満たし、以降は昭和26年4月1日まで段階的に19年まで引き上げら
れることになります
ⅲ 坑内員・船員の期間が15年以上あるとき
⇒坑内員・船員の期間については、被保険者期間を昭和61年3月以前は3分の4倍し、昭和61年
4月から平成3年3月までの間は5分の6倍する特例が設けられていますが、実際の被保険者期間が
15年以上ある場合は、生年月日に応じて60歳以前から老齢厚生年金が受けられます。
※漁船に乗り組んだ期間の特例
⇒資格期間特例でも述べましたが、昭和27年以前に生まれた人で、昭和61年3月31日までに船
員保険の被保険者として漁船に乗り組んだ期間が11年3ヶ月以上あれば、老齢基礎年金の資格期間
を満たしたものとみなされます。なお、この場合、次の期間については、漁船に乗り組んだ期間から
除外されます。
ア 母船式漁業に従事する漁船に乗り組んだ期間(作業員として乗り組んだ期間を除く)または汽
船捕鯨に従事する漁船に乗り組んだ期間
イ 漁猟場より漁獲物を運搬する漁船に乗り組んだ期間
ウ 漁業に関する試験・調査・指導・練習または取り締まりに従事する漁船に乗り組んだ期間
ⅳ 国民年金(1号、3号)の納付済期間と免除期間、厚生年金加入期間、共済組合加入期間や合算
対象期間を合わせて25年以上あること
② 報酬比例部分の支給開始年齢
ⅰ 特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢
⇒特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は以下の様になります。
昭和16年4月1日以前生まれ 報酬比例部分、定額部分共に60歳から支給
昭和16年4月2日~昭和18年4月1日生まれ 報酬比例は60歳、定額部分は61歳から
昭和18年4月2日~昭和20年4月1日生まれ 報酬比例は60歳、定額部分は62歳から
昭和20年4月2日~昭和22年4月1日生まれ 報酬比例は60歳、定額部分は63歳から
昭和22年4月2日~昭和24年4月1日生まれ 報酬比例は60歳、定額部分は64歳から
昭和24年4月2日~昭和28年4月1日生まれ 報酬比例部分のみ60歳から
昭和28年4月2日~昭和30年4月1日生まれ 報酬比例部分のみ61歳から
昭和30年4月2日~昭和32年4月1日生まれ 報酬比例部分のみ62歳から
昭和32年4月2日~昭和34年4月1日生まれ 報酬比例部分のみ63歳から
昭和34年4月2日~昭和36年4月1日生まれ 報酬比例部分のみ64歳から
上記の期間になります(女性は5年繰り下げ)
ⅱ 障害者または長期加入者の場合
⇒一般男子及び女子の支給開始年齢の引き上げに合わせ、昭和28年4月2日(女子は昭和33年4
月2日)以後生まれの障害者(3級以上)または長期加入者(44年、528月以上)も生年月日に
応じて特別支給の老齢厚生年金(定額部分+報酬比例部分)の支給開始年齢を引き上げます。
つまり、簡単にいえば報酬比例部分しか支給されない場合でも、報酬比例の支給開始年齢に合わせて定額部分の支給があるという事です。
上記の表でいえば昭和28年4月1日生まれまでは、報酬比例部分が60歳から支給されるので60歳から定額部分も支給される事になり、それ以後は報酬比例開始時の年齢で定額部分の支給が行われる事になります(女性は5年繰り下げ)。
ⅲ 坑内員・船員の場合
⇒昭和33年4月2日以後生まれで、坑内員または船員としての実際の被保険者期間が15年以上あ
る人は、生年月日に応じて次の期間に特別支給の老齢厚生年金(定額部分+報酬比例部分)の支給
開始年齢が引き上げられます。
昭和21年4月1日以前 55歳
昭和21年4月2日~昭和23年4月1日 56歳
昭和23年4月2日~昭和25年4月1日 57歳
昭和25年4月2日~昭和27年4月1日 58歳
昭和27年4月2日~昭和29年4月1日 59歳
昭和29年4月2日~昭和33年4月1日 60歳
昭和33年4月2日~昭和35年4月1日 61歳
昭和35年4月2日~昭和37年4月1日 62歳
昭和37年4月2日~昭和39年4月1日 63歳
昭和39年4月2日~昭和41年4月1日 64歳
上記の生年月日の応じて特別支給の老齢厚生年金が支給されます。
④ 厚生年金基金の加入期間がある場合
⇒厚生年金基金に加入した人に支給される老齢厚生年金(65歳以降に支給されるものを含む)の報酬比例部分のうち、厚生年金基金加入員期間にかかる部分の給付(基金代行部分)は厚生年金基金に移されているため、報酬比例部分から差し引いて支給される事になります。
※厚生年金基金は厚生年金の報酬比例部分の一部を国に代わって基金独自の給付分を上乗せしてその報酬比例部分の一部を給付する仕組みであるため、このような取扱いになります。
⑤ 年金請求
⇒‘‘年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付):様式101号またはターンアラウンド方式’’に必要書類を添付して年金事務所に提出します。提出先は、最終加入制度が厚生年金保険の場合は、会社を管轄する年金事務所となります。その他の場合は住所地を管轄する年金事務所ですが、近くの年金事務所や年金相談センターでも可能です。
⑥ 受給権者あての通知
⇒審査を経て年金支給が決定した場合、‘‘国民年金・厚生年金保険年金証書’’が年金決定をした事務センターより送付されます。特別支給の老齢厚生年金の場合は、年金証書の厚生年金保険年金決定通知書欄に決定内容が記載されます。この支給決定額は、受給権発生年月日で計算された金額にその後の物価スライド(ここでは詳しく述べません)が反映された金額になります。
※受給権発生時点で在職中であって退職後に年金請求を行った場合、また、請求と同時に繰上げを申し出た場合は厚生年金の本来額のみの記載となり、初回支払時に‘‘年金決定通知書・支給額変更通知書で通知される事になります。
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