加入要件

 加入要件とは、原則として被保険者期間中に初診日のある傷病により障害となった場合に障害年金の認定対象となるという要件です。具体的には以下のように考えます。

 

①強制加入期間中について

 

 日本の年金制度においては、20歳から60歳までの日本国内に住所を有する期間は強制加入となります。この強制加入期間中は任意に被保険者資格を喪失して年金制度から脱退することは出来ず、個々人において保険料納付済期間・保険料免除期間・保険料未納期間とその保険料の納付内容に差があっても年金制度に強制加入という事実は変わりません。そのため、この強制加入期間中に初診日がある場合には、保険料納付要件を満たすかどうかはともかく年金制度に加入しているという加入要件は満たすという扱いになります。

 

②任意加入期間中について

 

 任意加入期間中については考え方が以下の4つに分かれます。

  1. 外国在住期間

    外国在住期間は、会社などに勤めており厚生年金被保険者として海外勤務する場合には、海外勤務中も厚生年金被保険者ですので加入要件は満たします。これは厚生年金被保険者の配偶者である国民年金第3号被保険者である場合も同様です。しかし、国民年金第1号被保険者の場合は、住民票の転出届を出さずに海外転出している場合は国民年金強制加入対象ですので加入要件は満たしますが、海外転出届を出している場合は国民年金は任意加入となるため、国民年金の任意加入手続きをしている場合は加入要件を満たしますが、任意加入手続きをしていない場合は加入要件を満たさず障害基礎年金を請求することは出来なくなります。但し、この場合でも転出相手国と日本が社会保障協定を締結している場合は年金制度に加入しているとみなされるため、相手国の年金加入期間を算入することで保険料納付要件を満たす場合には障害基礎年金の請求は可能です。

  2. 60歳から65歳までの国民年金の任意加入

    国民年金は20歳から60歳までは強制加入ですが、国民年金第1号被保険者期間としての保険料納付済期間が40年無い場合には当該期間に任意加入することが可能です。但し、この60歳から65歳までの期間は既に国民年金の強制加入被保険者からは外れており、法律上はこの期間については加入要件は問わないこととされています。そのため、60歳から65歳の期間において国民年金の任意加入をしているかどうかが加入要件に影響を与えることはありません(保険料納付要件には影響を与えます)。

  3. 65歳から70歳までの国民年金高齢任意加入

    国民年金には老齢年金の受給資格期間を満たせない方のために高齢任意加入制度が存在します。この高齢任意加入制度は老齢年金の受給資格期間を満たせない方のみが加入が可能なため、65歳までに既に老齢年金の受給資格がある方が高齢任意加入することは出来ません。この高齢任意加入をする場合には国民年金被保険者となるため加入要件を満たすことが出来ることになります。但し、障害年金制度において65歳以上は保険料納付要件の特例である直近1年要件が使えず原則の3分の2要件が適用になり、このことから実際に障害年金を請求できるかについては別問題となります。更に、平成29年8月から老齢年金の受給資格期間が10年に短縮されますが、障害年金の保険料納付要件が緩和されるわけではないためこの点にも注意を要します。

  4. 70歳以上の厚生年金高齢任意加入

    厚生年金にも国民年金と同様に老齢年金の受給資格期間を満たせない方のために高齢任意加入制度が存在します。厚生年金においても高齢任意加入が可能なのは老齢年金の受給資格期間を満たせない方のみです。この厚生年金の高齢任意加入をする場合も加入要件を満たすことは出来ますが、国民年金高齢任意加入と同様に保険料納付要件の特例は適用対象となりません。また、仮に障害年金を請求するにしても、厚生年金被保険者は65歳を超えると国民年金第2号被保険者とはなりませんので障害厚生年金のみの請求となります。更に、老齢年金の受給資格期間の10年短縮により厚生年金の高齢任意加入対象者は少なくなるでしょうし、障害年金の保険料納付要件が緩和されるわけではないため、実際に障害年金請求にあてはめるのは困難といえます。

③20歳前の期間(厚生年金被保険者でない期間)

 

 20歳前の期間については、厚生年金保険に加入する場合を除いて強制加入対象期間ではありません。この期間において初診日がある場合に、仮に加入要件を満たさないとして障害年金が請求出来ないとすることは法律の不備ということになります。そのため、この期間に初診日がある場合には加入要件を不問とし20歳前障害基礎年金の請求が可能となっています。但し、20歳前の期間は厚生年金被保険者でなければ保険料の拠出無く無拠出で国が20歳前障害基礎年金を支給することになるため一定の所得制限が設けられています。

 

④20歳未満60歳以上の厚生年金被保険者期間

 

 厚生年金は70歳まで加入可能であり、20歳から60歳までの期間でなくとも厚生年金被保険者となることは可能です。この期間についても厚生年金被保険者であることに変わりはありませんので加入要件を満たすことになります。但し、65歳以降は国民年金第2号被保険者となることは出来ないため、65歳以降に初診日がある障害年金を請求する場合には障害厚生年金のみの請求となります。また、65歳以降の請求では保険料納付要件の特例が使えないのは上記の通りです。

 

※(補足)国民年金と厚生年金の適用の境目の考え方は、厚生年金被保険者資格喪失が退職日の翌日であることから、退職時点までは厚生年金被保険者、資格喪失時点は国民年金被保険者であると考えます。つまり、資格喪失月に初診日がある場合には、初診日の日付によって国民年金または厚生年金のいずれかの加入要件に該当することになります。