遺族厚生年金の短期要件と長期要件

 遺族厚生年金には短期要件と長期要件があります。

 

 短期要件とは一言でいえば本来必要な25年以上の年金加入期間がなくても受給権が発生する要件であり、長期要件とは原則通り必要である25年以上の年金加入期間がある場合に受給権が発生する要件となります。

 

 短期要件とは本来必要な25年以上の年金加入期間がなくても発生する以上、受給権発生段階での厚生年金被保険者期間を元に年金額を計算すると非常に低額となることがあるため、いわゆる300月みなしという考え方があり厚生年金被保険者期間が300月ない場合であっても300月とみなして年金額を計算するため一定額の遺族厚生年金額が保障されることになります。

 

 これに対して長期要件とは、本来必要な25年以上の年金加入期間を満たしている要件であるため、短期要件とは異なり300月みなしは適用されず、受給権発生時点での被保険者期間を元にして遺族厚生年金が算出されます。

 

 また、長期要件該当者が一般厚年期間と共済厚年期間の混在者である場合には、遺族厚生年金については一般厚年期間に基づく遺族厚生年金は国から、共済厚年期間に基づく遺族厚生年金は共済組合からそれぞれ支給されることになります。

 

 なお、長期要件の遺族厚生年金は実際の厚生年金被保険者期間に基づいて計算されるため、25年以上の期間の中でほとんどの期間が国民年金被保険者期間である場合には、実際の年金額がかなり低額となることがあり、この場合に短期要件と長期要件のいずれも満たす方の場合には300月みなしのある短期要件を選択することになります。

 

 このように、遺族厚生年金の短期要件と長期要件が選択可能な場合には、より有利ないずれかの要件を選択することが可能となっています。