老齢厚生年金の繰下げ受給の考え方

 老齢厚生年金も老齢基礎年金同様に年金額を増額して受給することができる繰下げ受給の申し出をすることが出来ます。

 

 老齢年金の繰上げ受給が老齢基礎年金と老齢厚生年金の同時繰上げが必要となるのに対し、老齢厚生年金の繰下げ受給については老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰下げても良いし、一方のみ繰下げをすることも可能です。

 

 但し、共済組合員の期間における厚生年金被保険者期間に基づく老齢厚生年金と一般厚生年金被保険者期間に基づく老齢厚生年金については、共済組合制度と厚生年金制度との違いという理由から以前は別々に繰下げを行なうことも可能でしたが、被用者年金一元化により共済組合期間も厚生年金被保険者期間として統一されていますので、現在はこれらの期間について別々に繰下げを行なうことは出来ません。

 

 また、よく間違いやすいのが特別支給の老齢厚生年金に関してですが、老齢年金の繰下げ受給をすることが出来るのはあくまで65歳以降の老齢基礎年金と老齢厚生年金に関してのみとなります。

 

 特別支給の老齢厚生年金については65歳以降に支給される老齢基礎年金と老齢厚生年金とは別個の経過的な給付という位置付けであり、そもそも特別支給の老齢厚生年金の繰下げという制度が無い以上、特別支給の老齢厚生年金は受給しなければ5年以上の経過で時効にかかってしまい、時効経過部分から消滅してしまうため、受給開始年齢に到達したら速やかな請求が望ましく、例え、請求時点で在職支給停止により全額支給停止となってしまう場合でも、請求する時期が後になればなるほど請求の煩雑さが増したり加給年金の過払い等の問題が生じたり、困難案件となる可能性が高くなるため速やかな請求が望ましいといえます。

 

 その他の注意点としては、老齢基礎年金には振替加算が、老齢厚生年金には加給年金が加算される可能性がありますが、これらについては繰下げた場合であっても加算部分について増額されることはありませんし、そもそも繰下げしている期間を繰下げ待機期間といいますがこの繰下げ待機期間は老齢基礎年金や老齢厚生年金は支給されませんのでそれに付随する振替加算も加給年金も加算はなされないことになります。

 

 また、65歳以降も厚生年金被保険者である場合は在職支給停止の対象となりますが、仮に老齢厚生年金が在職支給停止の対象となっている場合は、その在職支給停止部分については繰下げの申し出を行った場合でも増額の対象外となります。

 

 補足として、年金の繰下げは最長5年可能ですが、例えば65歳から老齢年金を繰下げた方が72歳で繰下げの申し出を行った場合は、従来では72歳から繰下げ受給することになるため70歳から72歳までの部分を受給することは出来なかったのですが、現在は5年遡及が可能となっているため、この例では70歳に遡って繰下げ受給をすることが可能となっています。

 

※例えば78歳で繰下げ受給する場合は73歳までは遡及が可能となります

 

 また、繰下げ待機中に遺族年金等の他年金が発生した場合は繰下げ受給出来るのはその他年金発生時点までとなりますが、これについても以前は申し出が遅れた場合でもその申し出時点から繰下げ受給することになっていましたが5年遡及が可能となっています。

  

※他年金がの発生時点が1年未満である場合には老齢年金の繰下げ受給は出来ず、受給権発生時点に遡及して老齢年金を受給することになるため注意が必要です